犬の毛が抜けるときに考えられる皮膚病について
皆様、こんにちは。
さいたま市大宮区のパスカル動物病院です。
犬の被毛は定期的に抜けていくものですが、本来の換毛期ではない時に過剰な脱毛が見られると飼い主さんは不安に感じますよね。その背景に犬特有の皮膚病が隠れているのであれば、すぐにでも治療を始めなければなりません。そこで今回は、犬の毛が抜けるときに考えられる皮膚病について詳しく解説します。
▼犬の毛が抜ける病気とは?
犬の毛が抜ける病気としては、感染症、アレルギー性疾患、内分泌疾患、遺伝性疾患などが挙げられます。
【感染症】
犬の脱毛が見られる感染症としては、「膿皮症(のうひしょう)」や「マラセチア皮膚炎」、「皮膚糸状菌症」、「ニキビダニ症」などが考えられます。それぞれ細菌や真菌、ダニなどに感染することで発症する病気です。
【アレルギー性疾患】
ワンちゃんにも皮膚症状を伴うアレルギー性疾患がいくつかあります。その中でも犬種に関わらず広く見られるのが「食物アレルギー」と「アトピー性皮膚炎」です。どちらも脱毛と皮膚の赤みなどの皮膚症状が認められます。
【内分泌疾患】
内分泌疾患とは、ホルモンを分泌する臓器の異常によって引き起こされる病気で、皮膚症状が現れるものとしては「副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)」と「甲状腺機能低下症」が挙げられます。この2つの病気は「左右対称性の脱毛」が認められる点と「中高齢の犬」に好発す」点が共通しています。
【遺伝性疾患】
遺伝的な因子が関与している病気で、「パターン脱毛症」や「黒色被毛形成異常症」、「淡色被毛脱毛症」などが有名です。遺伝的な因子が関与している脱毛症は、かゆみや皮膚の赤みを伴わないという点で共通しています。その他、原因が解明されていない「脱毛症X」という病気でも、かゆみや皮膚の赤みを伴わない脱毛が認められます。脱毛症Xとは、毛周期が停止する異常で、ポメラニアンを始めとする北欧犬種に好発します。脱毛の症状は全身に現われるものの、頭と足の毛はほとんど抜けないのが特徴です。
▼病院を受診すべき犬の抜け毛とは
次に挙げるような症状が愛犬に認められる場合は、動物病院の受診が勧められます。
・地肌が明確に見えるほど脱毛している
・左右対称に脱毛している
・尻尾の毛がたくさん抜けている
・皮膚に赤みが認められる
・犬が強いかゆみを訴えている
・フケがたくさん出ている
・皮膚がベタついて臭い
・手足がむくんでいる
・以前よりも息切れをするようになった
・急に太った、あるいは痩せた
こうした症状が脱毛とともに見られる場合は、上述した皮膚病が疑われます。まずは当院までご連絡ください。
◎心配のない脱毛とは
ワンちゃんに脱毛が認められても、その量が少なかったり、かゆみや赤みなども見られなかったりする場合は、とくに心配はないといえます。換毛期の脱毛であればなおさらです。
▼犬の毛が抜ける皮膚病への対処法
犬の毛が抜ける皮膚病への対処法は、原因によって異なります。
◎感染症への対処法
感染症が原因で犬の脱毛が認められる場合は、病院での治療が第一となります。それぞれの病原体に有効な薬剤などを使って、症状の緩和をはかります。病気が治った後も再発を防ぐため、住環境やワンちゃんの体の衛生状態を良好に保つように努めてください。
◎アレルギー性疾患への対処法
アレルギー性疾患に由来する脱毛症は、まずアレルゲンとなっている物質を突き止める必要があります。その上で、食事や生活習慣を改善して、アレルギー症状を緩和していきます。
◎内分泌疾患への対処法
内分泌疾患に関係した脱毛症も動物病院での治療が必須といえます。ホルモン剤を用いた治療などを行って、症状の改善に努めます。内分泌疾患で問題となるのは脱毛だけではありませんので、ワンちゃんの全身の健康維持のためにも早急に治療を始めるようにしてください。
◎遺伝性疾患への対処法
遺伝性疾患に関しては、病気によって治療法も異なるため、まずは獣医師に相談することが大切です。愛犬の病気について正確に理解した上で、最善といえる治療を選択していきましょう。
▼まとめ
今回は、犬の毛が抜けるときに考えられる皮膚病について解説しました。その原因は感染症からアレルギー、内分泌疾患に至るまで極めて多岐にわたることから、飼い主さん自身で判断はせず、獣医師の診断を受けることが大切です。愛犬が今回ご紹介したような症状に当てはまるような場合は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。